2017/05/05    10:17

独裁体制を固めるトルコのエルドアン大統領

4月16日のトルコで実施された国民投票は行政府の首長、国家の元首、与党の党首、閣僚任命権、議会解散権、司法の過半数の人選権などの権利が全て大統領に付与されることを承認させる投票であった。結果は賛成51.4%、反対48.6%となった。それはイスラム圏の絶対的君主スルタンの誕生である。
民主主義の基本である立法、行政、司法の三権分立が完全に無視する独裁制の誕生である。

賛成と反対が僅か2%ということは、現在のトルコの経済低迷そしてテロ活動の激化などから考慮すると、この先のエルドアン大統領の政治運営は容易ではない。しかも、今回の国民投票は不正投票が明らかにされている。例えば、票が有効と見做されるのに必要な公式の押印されていなかった250万票が有効投票とされたという事実(El Confidencial)。

同様に、物理的に投票できなかったはずの40万人の票が投票されていた。その一方で、南東地方でトルコ労働者党(PKK)と激戦が交わされている地域から離れた35万5000人から50万人が投票に必要な詳細不明で投票できなかったという出来事も起きた。彼らの多くはクルド人で、勿論、反対票を入れる人たちだった(esglobal.org)(El Confidencial)。

今回の投票を視察管理していた欧州安全保障協力機構(OSCE)でさえ、今回の投票は中立性に欠けていたと評価したほどである。

トルコ国内の政府に批判的な報道機関やジャーナリストへの圧力は止むことがなく、解雇や刑務所に収監されることを覚悟して報道任務を果たさねばならない。2013年にトルコを離れたジャーナリストのヤブズ・バイダルは「トルコの報道メディアの95%は昏睡状態にあるか、人工呼吸器で命を繋がれているかのどちらかだ」とスペイン電子紙『Vozpopuli』の取材に答えた。そして、「1930年代のドイツに似ている」と指摘したそうだ(vozpopuli.com)。

「ガーディアン」と「デルシュピーゲル」が企画しているEuropean Pressの特別賞を最近受賞した同氏は「2016年7月15日のクーデター未遂のあと、我々ジャーナリストは国内に残って報道活動を続けるか、身の安全を守り、収監されることを避ける為に外国に出るか、二者択一を迫られるようになった」と述べた。そして、「(タクシム後方に繋がる)ゲジ公園で2013年に(政府の都市計画に反対して)デモ抗議があってから以後、9000人のジャーナリストが解雇され、その内の120人が収監されるという事態になった」と回顧した。また、別の情報によると、4月に入ってから収監されているジャーナリストは150名余りになっているそうだ(vozpopuli.com)(GATESTONE INSTITUTE)。

更に、司法権の独立性を喪失させるべく、クーデター未遂に関与したとしてエルドアン政権は4272人の判事と検事を解雇している。同様に、軍部では168人の将軍を始め、7463人の軍人が逮捕されたという(GATESTONE INSTITUTE

エルドアン大統領は2003年から首相として2014年まで政権を維持した。憲法の規定から連続して4期目も首相として務めることが出来ないという理由で、当時はまだ象徴的な存在でしかなかった大統領のポストに就いた。首相には彼に忠実なダウトォール前外相を任命した。即ち、大統領になっても、実質権力はエルドアンが掌握していた。つまり、2003年から現在まで14年間、彼が実権を握って来たことになる。

彼が大統領に就任してからは、彼の脳裏にあったのはトルコの政治を議会制から大統領制に変えることであった。前回の総選挙の結果、憲法改正に必要な議会の3分の2の議席を満たすには13議席が不足していた。そこで、エルドアンは予定を変更して、憲法改正を国民投票に問うことにしたのである。それが、今回の国民投票であった。

2023年のトルコ建国100周年まで実権を握っておきたいというのが、エルドアンが長年望むところであった。今回の国民投票の勝利で、それが可能となった。しかし、100年前にムスタファ・ケマル・アタテュルクがトルコを建国した時の建国の軸となったのは世俗主義と民族主義であった。そして、ヨーロッパ文化への接近であった。トルコの軍事はそれを信条として常に世俗主義を守って来た。

ところが、エルドアン大統領は世俗主義を放棄してイスラム主義に向かっているのである。それは軍が支持する世俗主義とは異なるものであることから、軍部からの反発がいつクーデターとなって表面化するかという疑問があった。それが昨年7月に起きた。このクーデーター未遂は彼が自ら仕掛けた、あるいは米国CIAとトルコ軍部の一部の仕業だといった憶測もある。

また、トルコのEUへの加盟についてはこれまでも試みられて来た。しかし、トルコはイスラム文化であり、加盟すればドイツに次いで2番目に人口の多い国になるということからEU加盟は容易ではない。エルドアン大統領は時にEU加盟を諦め、ロシア及び中央アジアとの関係強化に向かうことも時に関心を示した。

一方、国内問題としてクルド人の独立問題を抱え、PKKとまた衝突が続いている。彼らによるトルコ国内でのテロ活動も続いている。トルコ人口7800万人の2割がクルド人であるとされている。元々、エルドアンはトルコ民族純血主義者で、彼は青いたてがみの狼「アセナ」に助けられたテュリク族の子孫が現在のトルコだという、純血主義者で、そこにはクルド人のような他民族が入る余地はないのである。それが、エルドアンがクルド人をトルコから追放しようとする根拠である。

そして、今、エルドアンは政権を絶対的なものにして、イスラム主義による国家統一を図ろうとしているのである。そこにはクルド人も、彼を批判する報道メディアも、彼が理想とする国家統一には邪魔な存在なのである。そして、軍部も彼の息のかかった者に掌握させている。

現在の中東の中で、将来的にリーダー的存在になるのはイランしかいない。ペルシャ帝国の流れを汲むイランは、経済そして軍事的に強力な国になるであろう。それに唯一対抗できるのはトルコである。サウジは部族の集まりで、国家としての形体を成しておらず、2030年以降のサウジの財政赤字は深刻になり、衰退へと向かうであろう。ビジョン2030はあるが、それは机上のプランとして終わるだけである。

しかし、トルコが進もうとしている道は民主化とは程遠く、三権分立の存在しない独裁国家形成への道である。その犠牲者は国民投票に反対を投じた市民と報道メディアである。今後のトルコは、国家がエルドアン支持派と反対派で二分する方向に向かって発展が留まる可能性が十分にある。その意味で、イランの中東での覇権体制は、邪魔する国もなく確立されて行くであろう。

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