2016/04/18    13:00

オバマ大統領の広島訪問は、もはや既定路線?――ケリー氏が見せた積極性

広島で開かれたG7外相会談では、ケリー米国務長官がアメリカの現職の国務長官として初めて、平和記念公園を訪れるという記念すべき時となった。「核なき世界」を提唱するオバマ米大統領は、任期中の最後の機会となる5月のサミットの際に、広島を訪問することを検討しており、ケリー氏の広島訪問は大統領の訪問に向けた世論の動きを探る観測気球の意味合いがあった。
 
アメリカでは、「原爆の投下によって、日本本土での決戦がまぬがれ、多くの米兵の生命が救われた」という原爆投下を正当化する意見がいまだに根強い。11月の米大統領選では、オバマ大統領を「弱腰」とこきおろす共和党のドナルド・トランプ氏が勢いを強めており、安易に広島を訪問してオバマ氏が「謝罪外交」と批判されれば、民主党候補に逆風が強まる恐れもある。そこで、国務長官の訪問によって、様子を見ようとしたわけだ。
 
ところが、ケリー氏の動向には、オバマ氏の広島訪問がすでに既定路線になっているかのような感があった。慰霊碑への献花を終えた際に、予定になかった原爆ドームの見学を提案したのは、他ならぬケリー氏その人だった。ケリー氏は熱心に展示に見入った上で、オバマ氏の広島訪問を記者会見で勧めた。
 
オバマ氏による広島訪問には、自身が唱えた「核なき世界」のビジョンを、任期の終わりに改めて示すという実績づくりの意味合いがある。一方で、日本にとっては、日米同盟をいっそう強固なものとし、中国などの軍事的な脅威に対抗する上でも、メリットが大きいだろう。
 
中国は歴史問題をテコに、日米の離間をつねに狙っている。アメリカは先の大戦で、日本を倒す上での“同盟国”だったという歴史観を、繰り返し発信している。もしオバマ大統領の広島訪問によって、日米がさらなる和解を進めることができるのであれば、かつての敵国同士がより深い和解を進め、地域の安定を目指すというモデルを示すことにもなるし、そのことは終戦から70年以上経った現在でも歴史問題で日本を糾弾し続ける中国や韓国の異端さを際立たせることにもなる。
 
アメリカにとって幸運なことは、広島訪問が必ずしも「謝罪」を意味するものではないということだろう。東アジアには、80年近く前の“虐殺事件”をいまだに喧伝し、オークションのように死者の数を毎回のように吊り上げて日本を威嚇する国や、「20万人の女性が強制連行され、性奴隷にされた」というこちらも根拠不明の数字を使って日本に「謝罪や賠償」を迫る国も存在する。しかし日本では、アメリカの大統領に対して「被害者に土下座して詫びよ」と主張するような意見は極めて少数派だろう。
 
オバマ大統領も戦後生まれであり、当時を生きた人間として謝罪できるわけではない。そして、70年以上前の出来事によって、いつまでも国同士の友好関係にしこりが残るとすれば、それは不幸なことである。オバマ大統領による広島での演説も検討されているが、甚大な被害を生んだ核兵器の悲惨さを胸に刻みつつ、核兵器の廃絶を目指すという言葉さえあれば、十分な和解の場になり得る。
 
オバマ政権はこれまで、「アジア回帰」を外交政策の軸に据えると宣言しながら、実質的な政策が乏しいと批判されてきた。広島訪問によって、日米の和解を進め、アジアでの新たな脅威に両国が共同して取り組むための気運を高めることができれば、それは大きな実績になるだろう。オバマ氏の広島訪問に期待したい。

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