2017/06/07    10:36

19年ぶりに訪日したアルゼンチン大統領

一昨年12月にアルゼンチンの大統領に就任したマウリシオ・マクリ。彼の投資を求めての外遊は留まることがない。今年2月にはスペイン、3月にはオランダをそれぞれ訪問している。スペインとは歴史的な繋がりがあり、オランダは同国のマクシマ王妃はアルゼンチン出身であるという縁がある。
 
更に、マクリ大統領は南米でアルゼンチンも加盟しているメルコスルを通してブラジルと共にリーダーシップを取って今年末までにEUとの通商協定を成立させたいと積極的に活動している。

5月に入って、マクリ大統領はアラブ首長国連邦のドバイを経由して中国、そして日本への訪問を開始したのであった。まず、中国を4日間の滞在で訪問し、「一帯一路」の国際会議にも出席した。その後、5月18日から2日間の予定で日本を訪問したのである。

日本ではマクリ大統領の訪問はメディアの注目をほとんど集めなかった。その理由は両国の貿易取引からして、これまで関係が薄いということが一番の要因であろう。しかも、アルゼンチンは遠い国というイメージがある。日本ではタンゴを通してアルゼンチンを連想させるくらいだ。また、アルゼンチンにとっても日本はこれまで重要度を持たなかったようである。

2003年から2015年まで、キルチネールとフェルナンデスと続いたアルゼンチン大統領は、彼らは夫婦だったのだが、チャベス前大統領の反米主義、そしてボリバル革命に共鳴して、社会主義国との関係強化に向かったことから、日本との関係は疎遠になっていた。そして、アルゼンチンは中国、ロシア、イランといった国々との関係強化に向かったのであった。この夫婦による大統領政権の前のアルゼンチンは極度の経済低迷で、政権短命の3人の大統領が続き、外遊をしている余裕などなかった。

今回のマクリ大統領の訪日は同国大統領として19年ぶりの訪問になるという。最後に日本を訪問したのはメネム大統領で日本との国交樹立100周年を記念しての訪問であった。
 
マクリ大統領が就任すると、彼はそれまでの社会主義国との外交から180度方向転換して欧米との関係強化に向かったのである。先ず、米国との関係回復から始まって、アジアにおける日本の存在を見直すようにもなった。その返礼として、昨年12月に安倍首相が首相として57年振りにアルゼンチンを訪問した。そして、今回のマクリ大統領の訪日へと繋がったのである。

マクリ大統領が外遊で求めるのは投資先を探すことである。1920年代のアルゼンチンは肥沃な広大な土地を利用してヨーロッパにおける食糧倉庫として栄え、米国に次ぐ2番目に豊かな国であった。当時はヨーロッパからの投資も盛んで、南米のGDPの50%はアルゼンチンが担っていたほどであった。しかし、その後、政府による企業の国営化で経営に干渉し自由貿易を疎外、そして政治の腐敗でアルゼンチンの経済は後退、現在のGDPで59位にまで後退しているのである。

マクリ大統領は1920年代と同じように外国からの投資を募り、国を発展させようと望んでいる。アルゼンチンはそれに応えるだけの資源に恵まれているからである。例えば、食料について、「アルゼンチンは現在4億人を満たすだけの量を生産しており、5年から8年後にはそれを2倍にしたい」とマクリ大統領は北京で中国の企業家を前に述べたことをアルゼンチン紙『iProfesional』が報じた。これは中国企業家からのアルゼンチンへの投資を誘おうとする発言であった(iprofesional.com)。

更に、将来世界で水不足が生じるのは必至だが、アルゼンチンは淡水も豊富にある。電気自動車に必要なリチウム、そして原油、天然ガスなども埋蔵されている。また、南極を睨んだ地政学的に重要な位置にアルゼンチンは存在している。
 
今回の中国への訪問で、両国は総額150億ドル(1兆6700億円)にのぼる21の合意を交わしたという。それ以外に、125億ドル(1兆3900億円)を投じて2つの原子力発電所の建設も再確認された。原発の建設はフェルナンデス前大統領が中国と合意したものであったが、マクリ大統領は就任早々それを見直すと回答して、建設を中断させていた。最初の1基目の建設は2018年1月からで、2基目は2020年1月から建設開始とされている。同様に、鉄道網についても前大統領の時からの合意に基づいて改善が進められることになっている(ambito.com)。
 
マクリ大統領が中国と日本に対して、インフラ整備などでの入札に積極的に参加して欲しいと要望を伝えているが、大統領の根底にあるのはコスト面から見て中国を優先し、中国では満たされない精密さを要求されたものは日本企業が担うという考えでいるように思える。

マクリ大統領と安倍首相が双方の閣僚や関係官僚を交えた交渉のテーブルの席で、マクリ氏は「競争力と生産力を有するようになった日本の秩序さとその為の取り決めがアルゼンチンは必要としている」と語り、「人的資源と自然資源は豊富に備えている。それを上手く活用する為の手段と組織が我々には不足している」と述べたことが『iProfesional』でも報じられた(iprofesional.com)。
 
マクリ氏の訪問に合わせて、トヨタはブエノスアイレスに近い都市サラテにある同社での生産量を30%増産して年間13万2000台体制にすることを発表した。その為に、輸出台数を6万台から9万台に増やすとしている。それは300人の新規採用、そして関連企業では1500人の雇用増加に繋がるとしている。アルゼンチンのトヨタは同国にとって大事な企業に成長しており、フェルナンデス前大統領の政権時のインフレの高騰と極度の景気低迷時でもトヨタは輸出が好調で、外貨獲得に貢献しているとして政府から必要な部品の外国からの仕入れにも制限なく許可されていたほどであった(iprofesional.com)。
 
一方、中国は現在まで4社がアルゼンチン市場に進出しているが、これから5社増えて、9社の中国製自動車がアルゼンチン市場で販売されることになるという。それは同市場で販売されている自動車の2%を占めることになると予測されている。価格が安いことからフォード・フォーカス、シボレー・クルーズ、ホンダ・シビックなどが国内販売で影響を受けるだろうと指摘されている(iprofesional.com)。
 
安倍首相はマクリ大統領の南米におけるリーダーシップが高いことを評価していると、アルゼンチンの主要紙で取りあげている。そして、国際協力銀行(JBIC)を介して積極的に融資をしていく姿勢でもあるという。その最初の試みとして鉄道における自動制御装置の設置に4950万ドル(55億円)の融資を予定している。現在のアルゼンチンでは鉄道網の10%がこの装置が設置されているだけだそうだ(Sputnik Mundo)。

アルゼンチンには昨年まで日系企業は78社が進出しているだけだという。そして、日本からの投資は7億8200万ドル(868億円)と非常に少ない。しかも、その70%は自動車関係の投資だという(ambito.com)。
 
ブラジルが経済的に大きく後退し、政治的にも汚職で政情不安がこれからも続くことから、南米におけるアルゼンチンの存在はこれから更に重要度を増すであろう。かつて、20世紀初頭に世界をリードした歴史のある国である。当時のブエノスアイレスは南米のパリと呼ばれていたほどである。その名残は今も特に文化面で垣間見ることができる。

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