2017/02/08    08:30

「国境の壁」費用負担 断固拒否のメキシコ大統領

メキシコから流入する不法移民の米国への入国を防ぐのが目的だとして、トランプ大統領は1月25日、選挙公約の一つであるメキシコとの国境3200㎞に壁を建設する大統領令に署名した。しかし、クリントン政権時に壁の建設が始まり、現在まで既に1100㎞の壁は存在しているが、その有効性には疑問がもたれている。
 
この壁の建設にはメキシコを始め、米国のメディアも明確に反対の姿勢を示している。その建設費用は、140億-200億ドル(1兆6000億円-2兆3000億円)と膨大で、250億ドル(2兆8000億円)という概算もある(EL PAÍS)(magnet.xataka.com)。
 
壁が出来てから現在まで、6500人が身元が確認された遺体、1500人が身元不明のままの遺体となっている。壁が出来たことによって迂回して越境できる所を探している間に、日中は摂氏50度にまで気温は上昇し、夜になると零下になるという厳しい気候条件に数日間耐えて行かねばならないのである。その結果が上述の8000人の犠牲者となっているのである。それに、2000㎞を壁で延長するようになると犠牲者は更に増えるのは容易に想像できる(BBC)。
 
トランプ大統領は、この費用をメキシコ政府が100%負担すべきだと主張しているのである。それに対して、メキシコ政府はその支払いを断固拒否している。しかも、既に存在している壁のせいで国境近くの町の住民は、すぐ隣の米国の町に働きに行くこともできなくなった。また、川の水が氾濫して、壁があることによって水の流れが遮断され、洪水になったという例もあるという。国境にまたがって生息している生き物も、壁によってこれまでの自然の法則による移動が出来なくなり問題が発生している。既に、壁が出来たことによる弊害を知っているメキシコ政府にとって、更に2000㎞を延長することなど全く容認できないことなのである。
 
トランプ大統領の姿勢はこの費用を先に米国が議会で承認させて建設を進めるが、その後、いずれかの方法にてメキシコ政府がその費用を負担するものだと要求している。仮にメキシコ政府が負担しない場合、トランプ大統領が考えていると言われているのが以下のような建設費用の徴収手段であると言われている(BBC)。
一つ目は『米国のメキシコ移民が本国に送金するお金の押収』、二つ目は『メキシコ人の査証取得費用の値上げ』、そして『国境を通行する為の通行券の値上げ』である。
 
メキシコ政府は、これらのどの方法に対しても違法だとして国際司法裁判所に訴える構えでいるが、その中でも一番懸念しているのは米国政府が移民の送金を押収することである。それを恐れて、トランプが大統領になるのではないかという可能性が強くなった昨年からこの送金が急増してしたという。昨年11月の時点でその前年同月比で25%増加していたのであった。

毎年の移民による送金総額は、およそ250億ドル(2兆8000億円)。これはメキシコの外貨獲得の3本柱の一つになっている。他2本は自動車の輸出と原油の輸出である。この送金の重要性は、メキシコに残した家族の生活費に充てる資金となっているということからも容易にわかる。この送金を唯一の頼りに生活している家族が多くいるということなのである。

しかも、建設費用をメキシコが負担するということは、メキシコにとって屈辱的なことで、メキシコ政府は現行の北米自由貿易協定(NAFTA)から撤退する用意があるとしている。米国とカナダはアングロサクソン民族という意識もあって、既にメキシコを無視して二国間の貿易交渉を進めているという。即ち、現状の流れからはNAFTAは解消される方向に向かっているということである。もちろん、米国とメキシコの官僚レベルでは、NAFTAの存続についての交渉は進められているとしている。

米国がNAFTAに不満を抱いているのは、毎年米国はメキシコとの取引において600億ドル(6兆9000万円)の貿易赤字を計上しているということであり、それを是正したいという望みなのである。両国の年間の取引額は、5000億ドル(57兆5000億円)となっており、メキシコの輸出の8割は米国向け、米国からメキシコへの輸出は全輸出の16%を担っている(El Confidencial)。

トランプ大統領は、NAFTAはメキシコを一方的に有利にし、米国にとって非常にみすぼらしい協定であると批判している。しかし、現状は、メキシコはこの協定に加盟したことによって、メキシコの農業は、特に主要食であるトウモロコシが米国から遺伝組換えの安価な品種が大量輸入で壊滅、その他に玩具、家具、繊維産業なども同様に米国からの安価な輸入品によって完全に衰退してしまったのだ。しかし、この事実をトランプ大統領は無視している。その結果、職を失った多くの労働者が、移民として米国へ流れていったという事実も、トランプ大統領は無視している。NAFTAの恩恵を顕著に受けたのは自動車産業とその関連産業だけである。

更に、メキシコ政府が壁の建設費用の負担を拒否している理由の中には、現在メキシコとの国境から米国に不法入国している移民の中には中米のエル・サルバドル、グアテマラ、ニカラグアからの移民が多くいるという事実である。よって、メキシコ以外の国からの不法移民のせいでメキシコが壁の建設費を負担せねばならないということに、メキシコ政府は同意できないとしている。

つい最近の両大統領のツイートによる交信から、1月31日にワシントンで予定されていた両者の会談は中止となった。ペーニャ・ニエト大統領が出席を辞退することをツイートした時は、国を挙げてその決断に賛成した。トランプ大統領のメキシコを属国であるかのような命令的な態度を前に、メキシコの世論は屈辱的な会談に赴く必要はないという意見が支配していたのであった。

また、今回の危機があらためてメキシコ国内の産業発展を図る動機になるという見方もある。 

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