2017/06/15    13:27

フィリピン・ドゥテルテ外交の行方―米国からロシアへ軸をシフト

2016年6月にフィリピンにロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領に就任した。この変化によって、米国はアジア外交において重要な駒を失うことになるかもしれない。

ロドリゴ・ドゥテルテ氏は、ミンダナオ島のダバオ市の市長を20年以上勤めた人物だ。フィリピンの政治を支配してきたエリート層に属さない地方の政治家である。彼は麻薬との戦いに闘志を燃やし、自衛組織を設けて規定の法的処置ではなく私的に罪状を採決して麻薬犯罪者を処罰していた。その荒療治のお陰でダバオ市の治安は回復したのである。彼のこの手腕が全国的に信頼されて大統領に選ばれたのである。
 
ロシアのオリエント研究アカデミー協会のディミトリー・マスリャコフ教授はドゥテルテ氏について、「世界の情勢を価値判断し、中国と米国の対立の中で起きる変化に適切に即応して自らの外交構図を決めるという現実主義に徹した政治家である」と指摘している(Sputnik Mundo)。すなわち、1947年から存在している米比相互防衛条約に彼は束縛されないということなのである。臨機応変にフィリピン国家の為の外交を展開するという姿勢である。

その証左に、ドゥテルテ氏は昨年10月に訪日前に中国を訪問している。さらに、ロシアとも接近。その動機になったのは、昨年11月にペルーで開催されたAPEC首脳会議であった。その会議の開催中に、ドゥテルテ氏はプーチン大統領と接する機会があり、「プーチンは『他で武器を購入できないのであれば、私に求めてくれれば良い』と言ってくれた」と語ったそうだ。それに対して、ドゥテルテ氏は「(カーディンが)我々がお互いに同盟国であることを望まないのであれば、ロシアか中国に依頼するつもりだ」とプーチン氏に伝えたのであった(HISPAN TV)。
 
カーディンとはベンジャミン・カーディンのことだ。彼は米国の民主党上院議員であり、かつ、上院外交委員会のメンバーで、フィリピンで人権が侵されていることを批難している人物だ。そのカーディン氏が、オバマ政権時に、フィリピンが求めている26000挺のライフルの販売を中止すべきだと要求したのであった。その結果、国防省はフィリピンへのライフルの販売を停止したのであった。
 
ドゥテルテ氏にしてみれば、それは麻薬の普及を撲滅させる為の手段であり、米国からの干渉は受け入れられないという姿勢を示した。彼のその具体的反応が26000挺のライフル注文のキャンセルという形になった。そして、その事情を充分に熟知しているロシアに武器の販売を求めて接近したのである。一方のプーチン氏は、米国が26000挺のライフルをフィリピンへ売却しない可能性があることを事前に承知していたのである。
 
さらにドゥテルテ氏は、米国の冷たい姿勢を前に、フィリピンにある米軍基地から2022年までに撤退するように要求したのであった。
 
ドゥテルテ氏にとって、米国との同盟関係を放棄することはリスクを伴うことは十分承知している。フィリンピンは戦後、親米主義を通してきた。その意味からも、トランプ大統領の登場は、ドゥテルテ氏にとっても米国への信頼を取り戻せる機会であるかもしれないと見ていた。オバマ前大統領と異なり、シリア、アフガニスタン、そして北朝鮮からの脅威に対しても米国の強さを取り戻そうとするトランプ外交を見ることが出来たからだ。

しかし、ドゥテルテ氏は、「米国は今もフィリピンが米国の植民地であるかのように見做している。しかもロシアと米国の違いは、ロシアは武器を販売ってくれるが、米国はその前に条件を付けて来る」と指摘して、フィリピンの現在あるべき外交を変える必要があること表明した(actualidad.rt.com)。

そして、「トランプは私の友達だ。米国に背を向けるのではない。私の外交への取り組みが変化しただけだ」と述べたのであった。更に、「中国との協力関係もできた。ロシアとも良好な関係が出来上がることを望んでいる」と言って、現時点のフィリピンが求めるべき外交は、中国そしてロシアとの関係作りの発展であると判断したのであった(actualidad.rt.com)。
 
中国との関係においては、南シナ海の無人島と岩礁について領有権の争いがある。それを意識しながらも、ドゥテルテ氏はそれらの領土の占拠を軍隊に指示している。実行支配した上で紛争相手国と交渉しようという構えである。その中でもフィリピンの実行支配が目立つ島はパグアサ島である。南沙諸島には、14の島と50以上の岩礁が存在しているが、現在フィリピンが実効支配しているのは、9つの島といくつかの岩礁である(UNIVISION NOTICIAS)。
 
フィリピンが米国に代わって武器の提供を求めているのはロシアである。ドゥテルテ氏にとって、ロシアとの関係の強化は非常に関心が深い所である。ロシアから武器の提供を求めることによって、中国そして米国を牽制できるからである。しかも、両国の敵対意識は相当に強い。

さらに、フィリピンとロシアは防衛軍事、原子力エネルギーの協力、投資、産業、運輸などを含む9つの合意を結ぶべく覚書を現在準備しているという(actualidad.rt.com)。武器に関しては、ロシアからヘリコプターや潜水艦も購入したいとしている。そして、原油の発掘にもロシアの協力を仰ぐ予定であるという。
 
今回のフィリピンとロシアの協力関係は、「棚からぼた餅」といった感じで、米国とフィリピンの一時的不仲によって生じたものである。オバマ政権下で中東における米国の存在感が薄れたのと同様に、フィリピンにおいても半世紀以上も続いて来た同盟関係を反故にするという過ちを、オバマ政権が犯したことも背景にあった。

しかし今後は、フィリピン国内で活動が活発になっているイスラム国と関係をもっているとされている過激テロ組織アブ・サヤフの撲滅にも、ロシアとの協力の可能性が生まれて来ている。

ドゥテルテ氏の外交方針転換によって、米国はアジアにおける重要な駒として存在して来たフィリピンを失うかもしれない。

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