2016/09/20    17:57

トルコのクーデター未遂で、いちばん得をしたのはロシア 。損をしたのは。。。

昨年11月にロシアの戦闘機をトルコ空軍が撃墜して以来、ロシアとトルコの関係は悪化していた。ロシアはその報復としてトルコに対して経済制裁を課した。トルコからの果物や野菜類の輸入禁止を始め、ロシアで商活動をしていたトルコの建設業者など企業は営業が出来ない状態になった。ロシアからの毎年300万人の観光訪問者も制裁の影響で95%の減少を見るに至った.。
 
一方のトルコ経済は成長が鈍くなり低迷している上に、クルド問題が絡みテロ事件が多発した影響で、トルコへの外国からの観光者は激減している。
 
その様な状態から脱皮する為にエルドアン大統領は6月にプーチン大統領に謝罪をした。そして、撃墜した戦闘機に対する賠償をする用意があることを伝えた。それにはイスラエルのネタニャフ首相の仲介があったという。同月にトルコはイスラエルとも関係を修復したばかりであった。トルコとイスラエルは2010年からイスラエル軍がパレスチナのガザ地区に入ろうとしたNGO船に武器が積まれているという疑いで航行を阻止して乗船し、それに抵抗するトルコ人の乗員10名に発砲して死亡させるという事件が起きて以来、両国の関係は冷却していた。
 
しかし、両国の取引は相互に進展しており、外交関係の回復も必要であるという状況が生まれていた。しかも、トルコにとって、制裁を課したロシアは脅威に映り、隣国との関係修復も必要であるという事態になっていた。一方のイスラエルは同国のリバイアサンガス田の天然ガスの大口の顧客としてエジプトに期待していたが、エジプトは沖合に大量の天然ガスを埋蔵しているガス田があることが確認された。その為、イスラエルは大口のお客を失うことになった。そこで新たな供給先としてトルコに話を持ち掛けた。
 
トルコはロシアからの大量の天然ガスの輸入そしてEUへの中継地となることを期待していたが米国の干渉で輸入プランは中断していた。米国にとって地政学的重要な位置にあるトルコが天然ガスの輸入でロシアの影響力が増すことは容認できないことであった。そこで、米国はトルコに圧力を加えて、必要とあらばトルコがNATOから離脱するように仕向けることも可能であると脅してトルコがロシアの天然ガスのEUへの中継地になることを断念させようとした。それ故に、トルコはロシアからの天然ガスパイプライン建設の最終決定をしないままにしていた。
 
6月のトルコのロシアへの謝罪で両国の関係回復の兆しが見えた矢先の7月15日、トルコでクーデターが起きた。未遂に終わったが、エルドアン大統領はその背後に米国がいたと推測した。その根拠はインジルリク空軍基地のトルコ軍の司令官べギル・エルジャン・バン将軍と9人の下士官がクーデター未遂に関与したという疑いで逮捕されたが、そこは米軍兵士も駐留している。米軍側でクーデターが計画されていたことを知らないはずはないというのがエルドアン大統領の考えであった。

また、クーデターが起きた時に、ケリー国務長官は「トルコの団結と安定が失われないことを期待する」と述べた。それから時が経過してクーデターの未遂が明確になるや、米国政府はケリー国務長官も含め、トルコの民主化を称える声明をを発表したのであった。しかし、ケリー国務長官の最初のコメントからクーデターが成功することを望でいたような節が見えたのである。
 
同様にEUも冷たい反応であったとトルコ政府は感じていた。サウジアラビアとアラブ首長国連邦も事前にそれを知っていたという確かな情報は掴めないとされているが、クーデターが成功していれば喜んでいた節があることは想像されるとしている(「Katehon」)。

一方、ロシア側では諜報機関がトルコでクーデターの動きがあることを傍受していたという。それをトルコに伝えたとイランの紙面が報じた。プーチン大統領がエルドアン大統領にそれを伝えたというのだ。
 
8月9日にロシアを訪問したエルドアン大統領は「プーチン大統領がクーデターが未遂に終わった翌日に、我々を支援する電話をくれたことは心理的に強い支えとなった」と述べた(「ABC」)。
 
今回のエルドアン大統領のロシア訪問で目指したものは両国の経済取引の再開である。何しろ、制裁の影響で両国の取引は43%まで落ち込んでいるという(「Arabia watch」)。

そして両国で中断となっていたロシアからトルコへの天然ガスのパイプライン「Turkish Stream] の建設である。アレクサンダー・ノバックエネルギー相は「2019年に最初の段階の工事の完成を目指す」と述べた(「ABC」)。

エルドアン大統領はペンシルバニア州に自主亡命しているギューレン師が今回のクーデター未遂の推進者だ見ている。米国政府が彼を匿う限り、トルコ政府は米国との関係を犠牲にするという構えだ。それであるが故に、以前のように米国がトルコに圧力をかけて「Turkish Stream」を中断させるだけの力はない。また、前回は米国は英国の協力を得てトルコをNATOから離脱させる用意があると脅した。その英国もキャメロン首相が辞任して、米国はEUで信頼できるパートナーとしてドイツとの関係強化を目指す構えだ。しかし、ドイツにはトルコ移民が多く、ロシアとの関係も深い。尚更、米国がトルコに圧力をかけるのは難しくなる。

しかも、トルコは今回のクーデター未遂を切っ掛けに、ユーラシア経済連合そして上海協力機構への接近を強める姿勢である。NATOを離脱する可能性はないように思える。そこには国家の安全とNATOとEUは一体であるという現実を無視できないためだ。トルコはロシアから天然ガスの供給を受けてそれをヨーロッパに供給せねばならない立場になるとEUとの良好な関係維持が必要である。その意味で、ヨーロッパと現在の関係を維持することが必要だとトルコ政府は知っている。しかし、EUに加盟したい希望はエルドアン大統領にはなくなっているという。

EUに加盟するには規定が存在している。その多くが現在のトルコの政治体制からは満たされない。それを知っているエルドアン大統領は「EUはキリスト教のクラブ」だと言って、自らEUに加盟する扉を閉めたというのだ(「El diario」)。

今回のクーデター未遂で一番の得をしたのはロシアかもしれない。そして、一番の損をした国は米国である。

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