2016/08/21    09:48

年内にも皇太子が即位? サウジ国王の「生前退位」の行方

サウジアラビアでサルマン国王が退位して彼の息子で国防大臣のムハンマド・ビン・サルマン皇太子(30)が新国王に即位するという噂がある。それも年内に起きるというのだ。それを報じたのは6月29日付の中東の電子紙「The Middle East Eye」だ。
 
ムハマンド・ビン・サルマン皇太子は王位継承順位2位で、それが事実であるなら、継承順位1位にあたるサルマン国王の甥のムハマンド・ビン・ナイーフ皇太子を飛び越えての即位になる。現在、ナイーフ皇太子は内務大臣に就いている。サルマン国王が80才という高齢で、しかもアルツハイマーを患っているという噂もあり、現在サルマン皇太子が実質政務を行なっていると憶測されている。

さらに同紙は、匿名で2つの情報ソースからこの即位の可能性のあるという情報を得たとしている。その裏付けのひとつは、この王位継承への同意を米国から得るべく、アラブ首長国連邦アブダビのムハマンド・ビン・ザイード皇太子がサルマン皇太子に色々助言していることである。その助言の中には、ワッハービズムに終止符を打つことや、米国のお墨付きを貰うにはイスラエルと強力な関係づくりをしておくべきだというものだ。

もうひとつはサルマン皇太子自身が国王になることを切望して「年内に国王になるべく、やるべき務めを成し遂げる」と彼に近い仲間に語ったというのだ(「Middle East Eye」)。

サウジアラビアの歳入は原油の輸出で賄われている。しかし、昨年後半からの原油価格の下落が影響して同国の財政の悪化が顕著になっている。この問題を解決すべく、サルマン皇太子が主導して「ビジョン2030」というプランを発表した。このプランはこれまでの原油の輸出に依存した経済から脱皮して、アラムコへの民間資本の導入、軍需産業の国産化、鉱物資源開発や民間企業の促進、原油に代わるエネルギー資源の開発などを盛り込んでいる。しかし、ワッハービズムから脱却することが容易でないように、「ビジョン2030」も単に机上のプランで終わってしまう可能性が強い。

ワッハービズムを支える宗教専門家会議の廃止をサルマン皇太子は試みているようであるが強い反発に直面しているという。また「ビジョン2030」も大規模な国家プランとして国全体がこの改革に取り組まねばならないが、サルマン皇太子の人望を疑う動きは昨年から目立っている。例えば、サウード家の建国者の孫のひとりがツイッターで「国家危機にある時に、国政がひとりの馬鹿者の手中にある」と批判した(「Hispan TV」)。

またイエメンに武力介入を決めたのはサルマン皇太子自身であったという。この武力介入も長期化してベトナム化している。また中東政治の著名専門家ティエリー・メイサン氏は彼のブログ「Red Voltaire」の中で、サルマン皇太子は政治イデオロギーを論ずる議論を全く受け入れず、反対意見に我慢することも出来ず、家臣が彼に服従することしか容認しないという姿勢を危険視してサウジアラビアの国家としての崩壊は避けられないと予測している。

またサウード家の別のひとりは昨年5月に、サルマン皇太子が国家財源から最近5か月の間に1300億ドル(13兆2600億円)を横領したと批難した(「Hispan TV」)。

サルマン皇太子に注目が集まっているのと対照的に、王位継承1位のナイーフ皇太子は目立たない存在となっている。しかし、ナイーフ皇太子はアルカイダとの戦いで貢献しており、米国を始めサウジアラビアと同盟関係にある国々では彼のテロとの闘いの業績を高く評価している。ナイーフ皇太子の動きを牽制する意味なのか、サルマン皇太子を国王にさせようと計画しているサルマン国王を始め、そのグループはナイーフ皇太子は重病にあると流布して彼が政権に就くことは難しと公に知らせているように見える。しかし、その確証はない(「Hispan TV」)。

昨年9月11日に聖地メッカでクレーンが倒れ100人以上が死亡し、24日には多数の巡礼者が圧死して700人以上が死亡するというこの二つの事件はナイーフ内務相とサルマン国防相の勢力争いがこのような悲劇に繋がったと憶測されている。またサルマン皇太子を支えるアブダビのザイード皇太子とナイーフ内務相の仲は悪い。前者が後者の父親を2003年に痛烈に批判したことに端を発する。
 
6月18日にサルマン皇太子は米国政府に自らの国王就任を説得させるべく米国を訪問し、オバマ大統領を始め、ケリー国務長官、そしてカーター内務長官らとも会談した。

サウジアラビアはこれまで共和党と民主党に献金して来た。しかし、ハッカーによって、同国が献金した選挙資金の20%の4000万ドル(44億円)がヒラリー・クリントン候補に充てられたことが発覚している(「Arabia.watch」)。

しかも、それを裏づける発言をサルマン皇太子自身が語っている。しかし、この献金に関係した言及はそれを掲載したメディアから理由なく消えたのも事実であった。米国の選挙キャンペーンで外国からの献金は禁止されているというのがこの背景にあるようだ。

サルマン皇太子は米国政府からの信任を得る為に動いている。しかし、内務相という強力な勢力を掌握しているナイーフ皇太子がこのまま、サルマン皇太子が国王に即位することを素直に受け入れるとは思われない。しかも、サウード家の内部は今までなかったようなサルマン皇太子への批判が昨年から表沙汰になっている。メイソン氏が憶測しているように、国家の崩壊に繋がる危機が訪れるかもしれない。

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