2016/12/21    13:51

サウジアラビアは2年以内に財政破綻の危機を迎える

中東政治の専門家ティエリー・メイサン氏は今年1月に彼のブログ「Red Voltaire」で、サウジアラビアが2年以内に破綻の危機に直面せねばならなくなると述べた。

その理由はサウジの歳入の80%以上を担う原油価格の下落がもたらす財政赤字がより深刻になるということである。2015年度の財政赤字はおよそ980億ドル(10兆円)とされている。
 
サウジの財政赤字は深刻で、遂にサウジの国営石油会社アラムコを上場して資金を得ようとする手段も選んだ。それを財政赤字の穴埋めや必要な国内投資に向けるとした(「El Pais」)。

政府の閣僚は20%の報酬のカットや官僚も手当金の一部排除、公共支出は15%削減などの実施も決めた。また、サウジ中央銀行は53億ドル(5500億円)を市場に投入した(「El Pais」)。

その一方で、支出と言えば軍事費は依然高く、またサウジの国教であるワッハーブ派の教えに従いシーア派の壊滅の為に世界の主要テロ組織への資金や武器の供給支援は止むことはない。そして、社会ではアパルトヘイトのようにシーア派の者が公務に就くことは出来ないという隔離社会が続いている。そして、労働人口の半分はアジアからの移民が担っている。しかし、この移民も不況の影響で勤務先の企業が倒産などに追い込まれ、移民は数か月分の給与を受け取れないという事態にもなっている。その一方で、サウジの若者には職場がないという現象が続いている。
 
これらの社会問題を改善し、原油の輸出に依存しない経済体制を構築するという目的でサルマン国王の息子で王位継承2番目のムハマンド・ビン・サルマン皇太子がリーダーとなってマッキンゼー・アンド・カンパニーに作成させた「ビジョン2030」を発表した。要するに国内で新しく産業を興す為に4兆ドル(400兆円)の投資をして、600万人の雇用を生むというプランである。
 
これから15年先にこのプランが実行できるように、国内の公共事業などの民営化への移行から始まって、武器についても、国内で生産できるものはあえて輸入せず、国内生産に切り替えるというものである。それを15年先には現実のものにして、その時には原油の輸出に依存しない体制になっているというプランなのである。また、その時には原油を輸出したくとも、原油が枯渇しているという可能性さえあるのである。サウジの将来は非常に深刻である。
 
この改革をムハマンド・ビン・サルマン皇太子がリーダーとなって推進して行くことになる。結論から先に言えば、このプランは絵に描いた餅、机上のプランで終わる可能性が非常に高い。彼はイデオロギーの討論を受け入れる姿勢はなく、自ら決めたこと以外は他人からの選択肢を受け入れることができない独裁的な人物が国家の構造改革を推進して行くには適任ではない。しかも、ワッハーブという独裁宗派を信条とするサウッド家が改革を推進して行くことは容易ではない。その上、サウッド家の内部でも既にサルマン皇太子を無能呼ばわりしている者もいる。
 
これからも世界は不況が続き、原油価格の一時的上昇はあっても、サウジの財政を大幅に黒字に転じさせられる可能性は非常に薄い。
 
ティエリー・メイサン氏の冒頭での、サウジアラビアが2年以内に破綻の危機に直面せねばならなくなる、と指摘しているように、現状のサウジを財政的に建て直し、サウッド家の独裁体制を維持して行くことは非常に難しくなる。
 
それに拍車をかけるように、サウッド家を支えていた米国との関係も今後は薄れ、ロシアと原油価格の統制で連携を強化している。ごく最近まで、サウジは戦略的に原油価格を低くして採油コストの高いイランとその背後にいるロシアのそれぞれ経済を苦境に陥れるようとしていた相手である。
 
しかし、米国が9.11同時多発テロでサウジがそれに関与していたという理由で米国議会はサウジに対して被害者家族が損賠賠償の訴えを起こすことが出来るようになったという出来事をサウジは重く見た。そして、米国との関係の見直しを図り、ロシアとの関係強化に動いている。
 
サウジにとって米国との同盟関係のような絆はロシアとは構築できない。なぜなら、ロシアはサウジのライバルであるイランと協力関係にあり、しかもロシアはイランを上海協力機構に加盟させることを進めている。ロシアの狙いは中東においてイランとサウジとの関係改善させることにあり、その上にロシアが中東における覇権を構築しようと狙っているのである。
 
その意味でも、サウジはこれから国内経済によって支えられた国家に変身して行かねばならない。この先、それが15年以内にできるのか? 恐らく無理である。むしろ、国内でシーア派も次第に影響力を持つようになり、またイエメンへの武力介入も経済的により負担が増え、サウジの国内のこれまでの独裁的な統一体制が崩れる方向に向かうようになる。そもそも、サウジのような広大な国でサウッド家が王家となって広大な国家を統治すること事体に無理がある。メイサン氏の上述ブログ「Red Voltaire」でも触れているが、米国はサウジを5分割に分けるプランをもっているという。

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