2016/10/18    16:34

トランプのスキャンダルは3日で103分、ヒラリーはたったの8分――米大手テレビ局の報道時間

米大統領選の本番まで1カ月を切る中、共和党のドナルド・トランプ候補は、「自分はスターだから女性に何でもできる」と過去に発言したとされるテープが流出したことで、ますます窮地に。さらには、被害を受けたと証言する女性が次々と名乗り出たことで、弁解ができなくなった。世論調査でも、民主党のヒラリー・クリントン氏との差は広がるばかり・・・・・・。
 
というのが、日本でもアメリカでも、大方のメディアの報道である。ところが、アメリカの保守系の新聞「ワシントン・タイムズ」紙は、違う見方を伝えている。
 
16日付の記事の見出しは、「女性をまさぐったという疑惑にもかかわらず、トランプはクリントンを射程圏内にとらえている」というもの。最新のワシントン・ポスト紙とABCの世論調査でも、両候補の差は4%にとどまっていることを伝え、その理由は、同時期に「ウィキリークス」によって流出したクリントン氏の電子メールのやり取りの衝撃度が、トランプ氏の疑惑の影響を相殺したためだろうと分析している。
 
この4%という数字が、大きいのか、大きくないのかを考えると、面白い側面が見えてくる。確かに、性的スキャンダルによって、トランプ氏は4%もクリントン氏に水を開けられてしまったと見ることもできる。その一方で、スキャンダルがあったのに、クリントン氏は4%しかリードを奪えていないとも言えるからだ。
 
今回の情報流出では、クリントン氏が多額の講演料をもらってウォール街で行った演説の内容も明らかになった。クリントン氏はある銀行での講演で、「私の夢は開かれた貿易による共同市場。保護貿易主義に反対しなければならない」と発言している。トランプ氏の台頭などによって自由貿易に反対する世論が盛り上がったことを受けて、クリントン氏も現在では自身が推進してきたTPP(環太平洋経済連携協定)に反対する立場を取っている。しかし、ウォール街に対しては違う顔を見せていたのだろうか。
 
かねてからウォール街との関係がウィークポイントの一つだったクリントン氏にとっては、痛いところを突かれたことになる。
 
興味深いのは、両候補の今回の疑惑についての米メディアの取り上げ方だ。テレビ局の報道をチェックしている民間団体「メディア・リサーチ・センター」が、7日から9日にかけての三大ネットワークの放送時間を調査したところ、トランプ氏の発言テープについて報じたのは103分。それに対して、クリントン氏の講演についての報道時間は、なんとたったの8分だったという。
 
つまり、クリントン氏の電子メール流出をまるで覆い隠すかのように、テレビが一生懸命にトランプ氏の問題を煽りに煽って、10倍以上の時間をかけて報じたにもかかわらず、クリントン氏のリードはいまだにたった4%なのである。
 
テープ流出で明らかになったトランプ氏の発言が、下品極まりないことは言うまでもない。これだけの酷い物の言い方が公になれば、今ごろ撤退していてもおかしくないが、かといって、国全体が「もろ手を挙げてクリントン」ということにはならない。
 
国民の半分は、クリントン氏を「好ましくない」とみなしている。トランプ氏の問題は、口が悪いこと、大学運営で訴訟沙汰になっていること、税金を納めていないことなど、プライベートな領域のものが多いが、クリントン氏の疑惑の方は機密情報の取り扱いや職権濫用といった国家の中枢にからむもので、深刻度が違っている。もしその違いが、この「4%」という数字の意味なのだとしたら、確かにうなづける。

103分と8分という数字を見ると、メディアが政治や選挙を動かすうえで、いかに影響力をふるおうとしているのかが伺える。その一方で、最後に判断をくだすのは、やはり国民の良識だということも。

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