2016/10/17    13:35

トルコは今後もNATOに加盟し続けるのか?

7月にトルコで起きたクーデター未遂は、トルコの今後の外交の方向転換を促す機会となった。

その中でも、特に注目されるのが、トルコは今後も北大西洋条約機構(NATO)に加盟し続けるのか、それともNATOを離脱し、ロシアとの関係強化からユーラシア連合に加盟し、最終的に軍事同盟の意味合いの強い上海協力機構(SCO)に加盟するのではないかという疑問である。

トルコのNATO加盟は1952年である。当時、NATOは共産主義のソ連の南下を防ぐために兵力の増強を必要としていた。それにトルコが対象国となった。しかも当時、地政学的に重要な黒海に面した国は、トルコ以外は全てワルシャワ条約機構の加盟国であった。

トルコはボスポラス海峡とダーダネルス海峡が自国の領土内にあり、この二つの海峡を封鎖すれば黒海は地中海と繋がらなくなる。そうなると、黒海に停泊のロシア艦隊は地中海に出られなくなって孤立してしまう。その鍵を握っているのがトルコであった。トルコのNATOへの加盟はその意味でも重要であった。また、トルコにとっても歴史的に幾度も戦争をした経験を持つソ連(旧ロシア帝国)からの脅威をNATO加盟によって軽減できるというメリットがあった。
 
トルコが昨年11月にロシアの戦闘機を撃墜した時に、トルコ政府はロシアからの武力による報復を恐れた。しかし、NATOが背後から支援してくれると思っていた。何故なら、NATOの第5条に「締約国に対する武力攻撃は全締約国に対する攻撃とみなす。そのような武力攻撃が行われたときは、各締約国が個別にまたは他の締約国と共同してその攻撃を受けた締約国を援助する」としている。この規約内容をトルコは期待していたからであった。
 
しかし、現実にはNATOからは支援の声明はあっても具体的な動きはなかった。それにはトルコのエルドアン大統領は失望したという。また、恐れていたロシアからの武力による報復も起きなった。プーチン大統領はトルコの背後にはNATOがいることを恐れたからであった。
 
トルコ、NATO、ロシアの3者の関係が一変するのが7月のクーデター未遂であった。このクーデター未遂の背後には米国がいたというのがトルコ政府には鮮明に映り、そのクーデターの動きを寸前にトルコ諜報機関に伝えたのはシリアに駐在するロシア諜報機関であったという。それはイランの情報メディアが明らかにした。
 
クーデター未遂前の6月に、トルコはイスラエルと関係回復をさせた。その縁で、イスラエルのネタニャフ首相を介してエルドアン大統領はプーチン大統領に戦闘機撃墜事件のことで謝罪した。また、この謝罪を容易にする為にエルドアン大統領は撃墜のGoサインを出したのはダウトオール首相だということにさせて彼を辞任させていた。実際には、撃墜の最終決定を下したのはエルドアン大統領自身であり、それを推したのはNATOだったと今では憶測されている。
 
エルドアン大統領の謝罪によって、ロシアとの関係回復の道をつくった矢先にクーデターが起きたのであった。一方の米国とは、クーデターの陰の推進者ということで両国の関係は悪化した。しかも、その首謀者だとエルドアン大統領が見なしたのが米国に自主亡命したギュレン師だった。米国が彼を匿っていることも米国との関係をより悪いものにした。ギュレン師はCIAと協力している関係もあって、米国にとって大事な人物である。しかし、ギュレン師がこの計画に参画していたという証拠は存在しない。但し、彼を信奉する者はトルコのあらゆる業界にいるのは確かで、その一部が今回のクーデターを仕掛けたと言っても、ギュレン師がその首謀者であるとは結論付けられない。
 
しかし、エルドアン大統領にとっては米国そしてギュレン師が今回のクーデターを画策したという考えを変える意向はない。そのような状況の中で、エルドアン大統領は8月9日にサンクトペテルブルグを訪問してプーチン大統領と会談をもった。今回の彼の訪問目的は飽くまで経済取引の回復だとされた。
 
戦闘機の撃墜の後にロシアはトルコに経済的制裁を実施していた関係で、トルコへのロシアからの年間300万人の訪問者も95%の減少している。しかも、トルコ国内のテロ事件の多発でロシア以外の国からの観光者も激減している。かつてのような好景気も見られず、ロシアとの貿易取引は制裁が影響して例年の取引量の43%まで落ち込んでいるという。
 
今回の両者の会談で経済取引の回復の糸口は出来た。しかも、米国の圧力が影響して保留になっていたロシアからトルコへの天然ガスパイプラインの建設も決めた。エルドアン大統領は米国の意向を今回は無視してこの建設を決定した。
 
ロシアはイランとトルコの3か国によって黒海とカスピ海を視野に置いた地政学的な勢力圏を構築したいとしている。それが基礎となって、更にインドまで手を伸ばして、カスピ海に沿ってアゼルバイジャン、イラン、ロシアを結ぶヨーロッパへの輸送ルートを構築してスエズ運河に対抗するプランをもっている。トルコはこの流通ルートには乗らないが、黒海を支配できる重要な位置にある。ロシアはそれをトルコに期待している。しかし、ロシアとはシリア紛争やコーカサス地方において利害が衝突する面もある。
 
一方、民族的にはトルコはヨーロッパではなくユーラシア連合につながる中央アジアとの関係が強い。しかし、貿易取引においては今もヨーロッパとの関係が深く、特にドイツには250万人のトルコ移民がいる。
 
中東政治アナリストのティアリー・メイサン氏のブログでは、米国はトルコをNATOから離脱させることを決めたと指摘している(「Voltairenet」)。
 
エルドアン大統領による軍部の一掃によって、今後のNATOに参加する軍人は彼に忠実な軍人ばかりとなる。NATOという実質、米国のヨーロッパ軍とでも言える組織の中で、新任のエルドアン大統領に忠実なトルコの軍人がどこまで米国の意向で動くか疑問はある。おそらく、当面トルコはNATOへの加盟を続けると筆者は考える。歴史的にロシアとは戦争を幾度も経験した相手であり、中東問題で利害が衝突する問題もある。一挙にロシアになびくのは危険だとエルドアン大統領は見ているはずである。

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