2016/06/13    08:00

米大統領選は、トランプ対クリントン――「皆の衆」の声を勝ち取るのはどちらか?

11月に行われる米大統領選は、共和党が実業家のドナルド・トランプ氏、民主党がヒラリー・クリントン前国務長官の構図になることが確定した。
 
政治経験のないトランプ氏は、“暴言”と批判されながらも、率直な物言いで「これまでの政治」にうんざりしている有権者の心をつかみ、党の公認指名にこぎつけた。対するクリントン氏は、長らく民主党の本命候補と目されながら、スキャンダルにまみれて「嘘つき」という評判が消えず、若者を味方につけた自称「社会主義者」の対抗馬に、最後の最後まで苦しめられた。
 
今回の選挙戦が象徴的なのは、共和党と民主党の路線の違いというよりは、「古い人」と「新しい人」という対決の構図になったことだろう。「政治家としての経験」は今回の大統領選では逆風になるという興味深い現象が起きている。
 
現在のところ、州ごとの選挙人獲得予測でも全米の世論調査でも、クリントン氏がトランプ氏に対して、有利な状況だ。しかし、本選挙までまだ5カ月を残しており、どちらの候補が勝つのか確定的なことは言えない。
 
そうした中で、あえて違った角度からアメリカの政治の見通しを立てるとすれば、大事なことはアメリカで本当のパワーを持っているのが誰かという観点だ。評論家として有名な上智大学の渡部昇一・名誉教授は、「アメリカは皆の衆の国」と分析している。民主主義と言えば、格調高い言葉のようにも聞こえるが、それはつまり、「皆の衆」が政治を動かすということ。「人民の人民による人民のための政治」というリンカン大統領のかの有名な言葉も、結局は「皆の衆の皆の衆による皆の衆のための政治」ということだ。
 
この「皆の衆」という言葉を基準にすれば、今回の選挙は、クリントン氏よりもトランプ氏の方に分があることが見えてくる。「不法移民は強姦魔だ」などの奔放な発言をマスコミは批判するが、逆にそうした発言が、トランプ氏が「本音を言う候補」として「皆の衆」の熱狂を呼ぶ原動力になっている。
 
対する民主党サイドで「皆の衆」を焚きつけて支持を集めたのは、クリントン氏ではなくバーニー・サンダース上院議員だった。世論調査によれば、彼の支持者の17%は本選挙ではトランプ氏に投票する意向だという。トランプ氏とクリントン氏、どちらが「皆の衆」を惹きつける力を持った候補なのかは、一目瞭然だろう。
 
日本が真剣に受け止めなければならないのは、こうしたアメリカの「皆の衆」の動向である。在日米軍の引き上げさえも示唆するトランプ氏の発言に対して、日本側は戦々恐々としている。しかし、トランプ氏が実際に大統領になるかならないかにかかわらず、彼を支持した「皆の衆」の声は、今後もアメリカの政治を動かす力となり続ける。トランプ氏とクリントン氏のどちらが大統領になるかを予測するよりも、こうしたアメリカを動かす世論の声を見きわめることの方がはるかに重要である。
 
その意味では、誰が次のアメリカの大統領になるにせよ、日本は日米同盟を重視しつつも「自分の国は自分で守る」体制を目指して進んでいく以外にない。

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