2016/11/30    11:08

トランプ氏が選挙中、不法移民について言わなかったこと

米国の次期大統領にトランプ氏が就任するが、米国のTPP(環太平洋経済連携協定)からの撤退はほぼ確実と見られている。その理由を同氏は、米国人労働者の為の経済発展を図り、グローバル化によって他国に自国の産業発展が奪われることを避ける為だとしている。トランプ氏がそれを具体的に示しているのが、彼の大統領選挙キャンペーン中に明確にしたNAFTA(北米自由貿易協定)が米国にとって不平等な協定であるというのである。
 
トランプ氏は、NAFTAの影響でこの15年間に米国内で6万社が消滅し、480万人の米国人が職場を失ったと指摘しているのである(「El Pais」)。
 
米国の企業が労賃の安いメキシコに工場を移転することや、移民による安価な労働力が米国市場で米国人の職場を奪ったということらしい。アメリカ労働総同盟(AFL-CIO)によると、米国の工業部門では70万人が職を失ったという。また経済政策研究所(EPI)によると、一般産業部門で41万5000人、電子機器部門15万人、自動車産業10万8000人が工業部門で職を失った米国の労働者となっている(「BBC」)。

これを理由に、トランプ氏は米国に在住している不法移民を本国に強制送還させると言っている。その大半はメキシコ、中米、キューバからの不法移民で、現在米国には凡そ1100万人いると推定されている。その内の6割がメキシコ人である。因みに、不法移民を含め米国に在住するラテン系移民は5530万人いるという。そして、トランプ氏はこの1100万人の不法移民を強制送還させると言っているのである。この送還すべき人数が余りに多すぎると見たのか、トランプはまず200-300万人の前科のある不法移民を対象に送還すると言い始めた。
 
しかし、トランプ氏が米国の有権者の前で隠していることがあるのだ。NAFTAによって、米国から安価な農作物や工業製品がメキシコに輸入されて、メキシコの農業は破壊され、200万人が農業を放棄せばならなくなったという事実である。そして、そこから多くの農民が米国に移民しているということなのである(「CASA JUAN DIEGO」)。すなわち、NAFTAの被害を受けているのは米国よりもむしろメキシコである。
 
例えば、トウモロコシはメキシコの主食である。NAFTAによって、米国から安価なトウモロコシが大量に輸入されて、メキシコの農家でのトウモロコシの栽培を廃業せねばならなくなったという事実がある。NAFTAの成立以降、農作物の42%は米国からの輸入となっている。80%の米、95%の大豆、56%の小麦は全て米国からの輸入品となり、メキシコの農業の破壊を導いたのである(「Rebelion」)。
 
メキシコの工業生産力を見ると、2008年を100としてNAFTAが合意された1994年は67.9であったのが、2012年には110.55と集計され、メキシコの工業部門の成長は非常に僅かだということになる。それは隣国に米国を抱え、そこから関税なしで安価な商品がメキシコに輸入されるからである。隣国に生産力のある米国があるので、メキシコでの工業の発展は非常に難しいということである。例えば、玩具部門では1993年にメキシコで玩具メーカーは380社存在していたのが、2年後にはわずかに30社が存続しているだけという厳しい現実をメキシコは抱えたのである。
 
米国からメキシコへの輸出は1993年の510億ドル(5兆3500億円)から2011年には2230億ドル(23兆4000億ドル)と、4倍に成長している。そのお陰で、米国では500万人の新たな雇用を生んだのである(「BBC」)。

この事実を、トランプ氏は有権者に伝えていない。米国はNAFTAの恩恵を受けているのである。逆にそれは、メキシコにとって全輸入量の51%が米国からの輸入に頼るという事実になっている。
 
また、メキシコがNAFTAのお陰で唯一発展しているのは自動車生産とその関連部門である。1993年までメキシコに存在していた自動車工場は13か所であったのが、現在30か所を数えるまで増加し、生産台数で世界8位になっている。日本からは日産、マツダ、ホンダ、トヨタが進出している。メキシコにとって、自動車生産部門がだけが唯一、NAFTAの合意による恩恵を受けていると言っても過言ではない。
 
11月18日には米国とメキシコの国境を跨いで5000社がトランプ氏の考えに反対して抗議した(「El Pais」)。
 
また、米国の主要都市ニューヨーク、ロサンジェルス、シカゴの各市長はトランプ氏の不法移民の強制送還の適用は受け付けないという声明を発表した。また、それ以外のおよそ300の都市も民主党の勢力下にあり、同様の姿勢を見せているという。米国の大都市などは中央政府の行政の及ばない独立した自治行政能力をもっており、例えば、シカゴのラーム・エマニュエル市長は「君たち(不法移民者)はシカゴは安全だ。シカゴ市が支援する」と言う声明を述べた(「El Mundo」)。

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