2016/01/07    08:00

オバマがつくった弱肉強食の世界――サウジのイランとの国交断絶の背景にあるもの

オバマ米政権にとって最後の年となる2016年は、行く先を暗示させるようなスタートとなった。

イスラム教スンニ派のサウジアラビアが、死刑宣告していたシーア派の指導者の処刑を断行したことで、シーア派のイランとの関係が緊迫化。テヘランのサウジ大使館が襲われたことでサウジはイランとの国交を断絶し、バーレーンやスーダンも続いた。アラブ首長国連邦やクウェートは駐イラン大使を引き揚げている。

ニムル師の処刑について、アメリカは宗派対立を煽る恐れがあるとして自制を求めてきたが、サウジは耳を傾けなかった。オバマ外交に対する不信を考えれば、無理もない。

オバマ政権は、同盟国エジプトで民主化を求めるデモが激化すると、あっさりとムバラク大統領を見捨ててしまった。シリア内戦では、「レッドライン」を宣言していながら、アサド大統領の化学兵器使用に対して、介入で答えることはなかった。「アサド大統領は退陣すべきだ」という呼びかけは、言葉だけになっている。さらには、サウジの懸念を無視して、イランとの核合意の妥結に向けて突き進んだ。

イランやその友邦が地域大国となることを懸念しているサウジにとってみれば、アメリカがいつでも守ってくれるとは限らないのであって、しかもオバマ政権は“敵方”を助けるような政策を取ってきたのだから、いまさらアメリカの声を聞く必要があるのかという話になる(もっとも、イラクのサダム・フセイン大統領の打倒で、イラクをイランにあげるようなかたちになったため、不信感はその時までさかのぼることもできる)。

オバマ大統領には、「アメリカは世界の警察官ではない」と宣言するなどして、アメリカが世界から撤退するという印象を与えてしまったという批判が根強い。その一方で、むやみに外国の政府を倒したり、大規模な軍事介入を控えるという方針を取ってきたことから、実は「リアリスト」という評判もある。

アメリカが介入を控えるようになったことで、各国はアメリカを意識した政策を取る必要が減り、今度は自国の生き残りと国益の拡大を目指すパワーゲームが激化した。一見して、世界は危険になったかに見えるが、ドライな見方をすれば、それはそれで国際社会のリアリズムである。オバマ外交によって、アメリカの一極支配が崩れ始め、弱肉強食というリアリティが、確かに世界に戻ってきたのかもしれない。この流れは、オバマ大統領の任期満了に向けて、さらに加速していくことになるだろう。

日本も例外ではない。オバマ大統領が自身の掲げた「アジア回帰」に本腰を入れようとしない中で、安倍晋三首相はオーストラリアやインドとの協力を固め、東南アジアには巡視艇を提供するなどしている。ロシアについても、アメリカの顔色を伺いながら、関係を前に進めるチャンスを待っている。着々と、独自の「中国包囲網」を完成させつつある。これもまた、アメリカがイニシアチブを取ろうとしない中で日本が進めてきたことだ。

オバマ政権のもとで、世界では弱肉強食というリアリズムがふたたび強くなった。それは、「アメリカが守ってくれる」という戦後日本の「デフォルト」だった考え方から、脱却する必要があるということでもある。G7サミットを迎え、衆参同日と見られる夏の選挙では、憲法改正が焦点となる今年は、その答えを出す年である。

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